実家の片付けと遺品整理 — 売却の前に決めておくこと

親が亡くなり、誰も住む予定のない実家を売ることになったとき、多くの方が最初に悩むのが家の中の片付けです。
何十年も暮らした家には、家具や衣類、食器、書類、思い出の品が大量に残っています。
片付けは、売る前に必ず通る作業です。
ただ、急いで始めてしまうと、相続放棄ができなくなったり、手続きに必要な書類を捨ててしまったり、兄弟の間で揉めたりすることがあります。
この記事では、相続した実家の片付けと遺品整理を、売却までの順番に沿って、行政書士と宅地建物取引士の両方の立場から解説します。
この記事でわかること
- 片付けを始める前に確かめておくこと(相続放棄・遺言書)
- 片付けながら探す書類と、形見分け・費用の分け方
- 業者の選び方と、売り方によって変わる片付けの範囲
片付けを始める前に、確かめておくこと
遺品は、相続人全員のもの
亡くなった方の家にある家具や衣類、貴金属などの遺品は、預貯金や不動産と同じく相続財産です。
遺産分割の話し合いが終わるまでは、相続人全員で共有している状態になります。
実家の近くに住んでいる相続人が、良かれと思って1人で片付けを進めると、あとからほかの兄弟に「勝手に捨てられた」と言われることがあります。
片付けを始める前に、相続人の間で、誰が・いつ・どこまで片付けるかを話しておきましょう。
相続放棄を考えているなら、手をつけない
亡くなった方に借金があるかもしれない場合は、特に注意が必要です。
相続放棄は、相続が始まったことを知った日から3か月以内に、家庭裁判所に申し立てる手続きです。
ところが、その前に遺品を売ったり、価値のある物を処分したり、持ち帰ったりすると、相続を承認したものとみなされ、相続放棄ができなくなることがあります。
傷みやすい食品を捨てる、貴重品をなくさないように保管しておく、といった程度であれば問題になりにくいとされています。
それでも、放棄するかどうか迷っている間は、家の中の物には手をつけず、写真を撮って記録しておく程度にとどめるのが安全です。
借金があるかどうかわからないときの考え方は「借金があるかわからないとき — 単純承認・限定承認・相続放棄の違い」で解説しています。
遺言書がないか、先に探す
片付けを始める前に、遺言書が残されていないかを確認しましょう。
遺言書に、実家や家財を誰に渡すかが書かれていることもあります。
自宅で見つかった手書きの遺言書は、封を開けずに、家庭裁判所で検認という手続きを受ける必要があります。
法務局に遺言書を預けていた場合は、法務局で確認できます。
見つけたときの流れは「遺言書の検認とは」をご覧ください。
片付けながら探しておく書類
実家には、相続の手続きや売却に必要な書類が、思わぬところにしまわれています。
ごみと一緒に捨ててしまうと、取り直すのに手間や費用がかかるため、片付けのときに意識して探しましょう。
| 探す書類 | 使う場面 |
|---|---|
| 通帳・キャッシュカード・証券会社からの郵便 | 財産を調べる・預金や株式の相続手続き |
| 権利証(登記済証)・登記識別情報 | 実家の名義の確認・売却 |
| 家を買ったときの売買契約書・領収書 | 売ったときの税金の計算(取得費) |
| 固定資産税の納税通知書 | 不動産の把握・相続登記の登録免許税 |
| 建築確認の書類・図面・境界の書類 | 売却のときに買主へ渡す |
| 借入れの契約書・督促状・クレジットカードの明細 | 借金の有無の確認 |
| 年金手帳・保険証券 | 年金・保険の手続き |
特に、家を買ったときの売買契約書は大切です。
見つからないと、売ったときの税金の計算で、売った金額の5%しか取得費として差し引けず、税金が高くなることがあります。
郵便物も、しばらくは捨てずにまとめておきましょう。
銀行や証券会社、カード会社からの郵便が、財産や借金を知る手がかりになります。
見つかった財産は、一覧(財産目録)にまとめておくと、その後の遺産分割の話し合いがスムーズです。
まとめ方は「財産目録の作り方」で紹介しています。
現場からの一言
実家の売却をお手伝いしていると、押し入れの奥の書類箱や、仏壇の引き出しから、権利証や古い売買契約書が出てくることがよくあります。
業者に片付けを頼むと、書類も家財と一緒に運び出されてしまうことがあるため、頼む前に一度、家族で書類だけは探しておくことをおすすめしています。
形見分けと費用の分け方
形見分けは、分け方の話し合いとあわせて
思い出の品を家族や親しい方に分ける形見分けは、遺産分割の話し合いがまとまってから行うのが基本です。
写真や手紙など、お金に換えられない物であれば、早めに分けても揉めることは少ないでしょう。
一方、貴金属や着物、骨董品、ブランド品など、価値がありそうな物は注意が必要です。
1人が先に持ち帰ると、ほかの相続人との間で不公平感が生まれます。
価値がわからない物は、査定を受けてから分け方を決めると安心です。
片付けの費用は、誰が払う?
片付けや遺品整理の費用を誰が負担するかは、法律で決まっているわけではありません。
相続人の間で話し合って決めることになります。
よくあるのは、次のような分け方です。
- 実家を売ったお金から、片付けの費用を差し引いてから分ける
- 実家を相続する人が負担する
- 相続人全員で、相続の割合に応じて負担する
実家を売る予定なら、立て替えた人の分を売却代金から精算する方法が、わかりやすくおすすめです。
誰がいくら立て替えたかがわかるよう、見積書や領収書は必ず残しておきましょう。
決めた内容は、遺産分割協議書に書いておくこともできます。
業者に頼むときの注意点
家財が多い場合や、遠方に住んでいて通えない場合は、遺品整理の業者に頼むことになります。
業者を選ぶときは、次の点を確かめましょう。
家庭のごみを運べる許可があるか
家庭から出るごみを、料金を受け取って運ぶには、市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が必要です。
許可を持たない業者が家財を運び出し、不法投棄をするトラブルも起きています。
古物商の許可や、産業廃棄物の許可だけでは、家庭のごみは運べません。
業者自身が許可を持っていない場合は、許可を持つ業者と組んでいるかを確認しましょう。
見積もりは、現地を見てもらってから
電話やメールだけの見積もりは、当日に追加料金を求められる原因になります。
現地を見てもらい、運び出す物の量、追加料金がかかる場合、買い取れる物の扱いなどを、書面の見積もりで確かめましょう。
2〜3社から見積もりを取ると、金額の目安がわかります。
売り方によって、片付けの範囲が変わる
実家を売る場合、どこまで片付ける必要があるかは、売り方によって変わります。
片付けを始める前に、売り方の見通しを立てておくと、無駄な費用をかけずに済みます。
| 売り方 | 片付けの範囲 |
|---|---|
| 仲介で売る(買主を探す) | 引き渡しまでに家の中を空にするのが基本。売り出しの前に、見学しやすい程度に片付けておく |
| 不動産会社の直接買取 | 家財が残ったままでも買い取ってもらえることが多い |
| 解体して土地で売る | 解体の前に家財を運び出す(解体費とは別に費用がかかる) |
仲介で売る場合でも、査定は片付ける前に頼んで構いません。
売れる時期の見通しが立ってから片付けの段取りを決めるほうが、空き家の期間も短くなります。
なお、相続した空き家を売るときの3,000万円特例を使う場合は、亡くなったあと空き家のままだったことを、電気・ガスの閉栓や水道の使用中止の日付で証明します。
片付けのために電気や水道を使い続けるときは、止めた日がわかる書類を残しておきましょう。
特例の条件は「相続した空き家を売るときの3,000万円特例」で解説しています。
片付けの時期や、エアコン・照明などを残すかどうか、費用を抑える工夫など、売却の段取りについては、グループの三共コスモスのブログ「実家の片付け、売る前にどこまでやる?」でくわしく紹介しています。
八潮市・草加市で実家を片付けて売る場合
実家が八潮市・草加市・三郷市にある場合、相続登記は、さいたま地方法務局 草加出張所が管轄しています。
売る前に、相続登記で名義を相続人に変えておく必要があります。
家財の処分は、量が少なければ、市の粗大ごみの収集(申し込み制)や、ふだんのごみの収集日に少しずつ出すこともできます。
遠方に住んでいて収集日に合わせて通えない場合は、業者に頼むか、売却を頼む不動産会社に相談してみましょう。
当事務所のグループの三共コスモスは、八潮市で不動産の売買と買取を行っています。
家財が残ったままの買取のご相談や、片付けの段取りも含めた売却のご相談にも対応しています。
相続登記から売却までをまとめてお手伝いする「相続不動産の売却サポート」もご用意しています。
草加市の方は「草加市の相続相談」、越谷市の方は「越谷市の相続相談」もご覧ください。
行政書士にまとめて頼む
相続の手続き、まとめてお任せいただけます
戸籍集めから財産の調査、遺産分割協議書の作成まで、行政書士がまとめてお引き受けします。相続登記は提携の司法書士と連携し、相続した家や土地のご相談も同じ窓口でお受けします。
初回のご相談は無料です(9:00〜19:00・水曜定休)。
まとめ:片付けは、順番を決めてから始める
- 遺品は相続人全員のもの。誰が・いつ・どこまで片付けるかを先に話し合う
- 相続放棄を考えているなら、価値のある物には手をつけない
- 遺言書と、通帳・権利証・売買契約書などの書類を先に探す
- 価値のある物の形見分けは、分け方の話し合いがまとまってから
- 費用は、売却代金から精算する方法がわかりやすい。領収書は残す
- 業者は、一般廃棄物収集運搬業の許可と、書面の見積もりを確かめる
- 売り方によって片付けの範囲が変わる。査定は片付ける前でよい
実家の片付けは、気持ちの整理にも時間がかかる作業です。
急いで捨てるより、相続の手続きと売却の見通しを立ててから、順番に進めるほうが、結果として早く、揉めずに終わります。
南出行政書士事務所では、相続人調査(戸籍の収集)から財産の調査、遺産分割協議書の作成まで、相続の手続きをまとめてお手伝いする「相続手続きサポート」をご用意しています。
宅地建物取引士として13年の実務経験があり、片付けの段取りから売却まで、同じ窓口でご相談いただけます。
初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
あわせて読みたい:相続した実家を売る前にやること — 遺産分割協議書から売却までの流れ
あわせて読みたい:借金があるかわからないとき — 単純承認・限定承認・相続放棄の違い
あわせて読みたい:相続した空き家の3つの期限 — 相続登記・3,000万円控除・固定資産税
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