相続した実家を売る前にやること — 遺産分割協議書から売却までの流れ

親が住んでいた家を相続したものの、誰も住む予定がなく、売ることを考え始める方は多くいらっしゃいます。
ただ、相続した家は、亡くなった方の名義のままでは売ることができません。
売る前には、誰が家を受け継ぐのかを決めて書類にし、名義を変える手続きが必要です。
この順番を知らずに不動産会社へ相談すると、買いたい人が見つかってから書類集めに追われ、引き渡しが何か月も遅れることがあります。
この記事では、相続した実家を売るまでに必要な手続きを、行政書士の目線で順番に整理します。
この記事でわかること
- 相続した実家を売るまでの手続きの順番と期間の目安
- 売って代金を分けるときに、遺産分割協議書に書いておくこと
- 売却の準備のうち、手続きと並行して進めてよいこと
実家を売るまでの全体の流れ
相続した実家を売るまでの流れは、次のとおりです。
- 遺言書があるかを確かめる
- 戸籍を集めて、相続人を確定する
- 家を含めた財産を調べる
- 相続人全員で話し合い、遺産分割協議書を作る
- 相続登記をして、名義を変える
- 不動産会社に依頼して売り出し、売買契約・引き渡しをする
亡くなってから売却が終わるまでは、早くて半年、相続人が多い場合や話し合いに時間がかかる場合は1年以上かかることもあります。
| 手続き | 期間の目安 |
|---|---|
| 戸籍集め・相続人の確定 | 1〜2か月 |
| 財産の調査 | 1〜2か月(戸籍集めと並行できる) |
| 遺産分割協議書の作成・署名 | 1〜2か月 |
| 相続登記 | 申請から2週間〜1か月ほど |
| 売り出しから引き渡しまで | 3〜6か月 |
1. 遺言書の有無と、相続人の確定
最初に、遺言書が残されていないかを確かめます。
遺言書で家を受け継ぐ人が決まっていれば、その内容に沿って名義を変えるので、相続人全員での話し合いは原則として要りません。
自宅で見つかった手書きの遺言書は、家庭裁判所での検認が必要です。
遺言書がない場合は、亡くなった方の生まれてから亡くなるまでの戸籍を集めて、相続人が誰なのかを確定します。
家を売るときは、買主や金融機関、司法書士も、相続人がそろっているかを確認します。
後から知らない相続人が見つかると、話し合いをやり直すことになるため、ここは省けない手順です。
戸籍の集め方は「相続の戸籍の集め方」で解説しています。
名義が祖父母のままになっていないか
実家の登記簿を取ってみると、亡くなった親ではなく、祖父母の名義のままになっていることがあります。
この場合は、祖父母の相続人まで含めて話し合いが必要になり、関わる人が一気に増えます。
売ろうと思ったときに慌てないよう、早めに登記簿(登記事項証明書)で名義を確認してください。
くわしくは「数次相続とは」をご覧ください。
2. 財産を調べて、分け方を話し合う
家のほかに、預貯金や株、借金がないかも調べます。
家だけを先に決めてしまうと、あとで別の財産が見つかったときに、分け方のバランスが崩れることがあるためです。
財産の整理のしかたは「財産目録の作り方」が参考になります。
家の分け方には、主に次の3つがあります。
| 分け方 | 内容 | 売るときの注意 |
|---|---|---|
| 1人が受け継いで売る | 相続人の1人の名義にして売る | ほかの相続人に代金を分けるなら、そのことを協議書に書いておく |
| 共有で受け継いで売る | 相続人全員の名義にして売る | 契約・引き渡しに全員の署名や本人確認が必要になる |
| 1人が受け継いで住む・持つ | 売らずに1人が受け継ぐ | ほかの相続人にお金を払って調整することもある |
家を売って代金を分ける方法を「換価分割」といいます。
実際には、代表の相続人1人の名義にして売り、代金を分けるやり方がよく使われます。
売るときの契約や手続きを代表の1人で進められるので、相続人が遠方に住んでいる場合にも向いています。
3. 遺産分割協議書を作る — 売って分けるなら書いておくこと
話し合いがまとまったら、内容を遺産分割協議書にして、相続人全員が署名し、実印を押します。
相続登記には、この協議書と、相続人全員の印鑑証明書が必要です。
代表の1人の名義にして売り、代金を分ける場合は、協議書に次のことを書いておきます。
- 家を売って、その代金を分けるために、代表の相続人が名義を受け継ぐこと
- 売った代金から、仲介手数料や登記費用、解体費などの経費を差し引くこと
- 残った代金を、誰に、どの割合で分けるか
協議書に売って分けることが書かれておらず、代表の1人が受け継いだ形になっていると、あとで代金を渡したときに、贈与と見られるおそれがあります。
また、売って利益が出た場合の税金(譲渡所得税)を、誰がどの割合で申告するかにも関わります。
税金の扱いは個別の事情で変わるので、売る前に税理士に確認しておくと安心です。
換価分割の名義の付け方と協議書の文言は「換価分割とは」、協議書の基本の書き方は「遺産分割協議書の書き方」で解説しています。
相続人に認知症の方や未成年の子がいるとき
相続人の中に、認知症などで判断する力が十分でない方がいると、そのままでは話し合いができません。
成年後見人を選ぶ必要があり、売るまでの期間が大きく延びることがあります。
くわしくは「相続人に認知症の方がいるとき」をご覧ください。
4. 相続登記をして、名義を変える
協議書ができたら、法務局で相続登記をして、家の名義を受け継ぐ人に変えます。
相続登記が終わっていないと、売買契約をしても、買主に名義を移すことができません。
相続登記は、2024年4月から義務になっています。
相続で不動産を受け継いだことを知った日から3年以内に申請が必要で、2024年3月以前の相続は2027年3月31日が期限です。
売る予定があってもなくても、早めに済ませておくべき手続きです。
相続登記の申請は、司法書士に依頼するのが一般的です。
南出行政書士事務所では、戸籍集めと協議書の作成までを担当し、登記は提携の司法書士と連携して進めています。
名義変更の流れ・必要書類・費用は「相続した土地・家の名義変更(相続登記)」で詳しく解説しています。
売主になる人の印鑑証明書と住所
相続登記に使う印鑑証明書には、期限の決まりがありません。
一方で、家を売るときに売主として出す印鑑証明書は、発行から3か月以内のものを求められるのが一般的です。
売る時期が決まってから取り直すつもりで、準備しておいてください。
また、登記簿の住所と、売主の今の住所が違うと、売るときに住所を変える登記が別に必要になります。
相続登記の時点で、今の住所で名義を受け継いでおくと、手間が減ります。
5. 手続きと並行して進めてよいこと
名義が変わるまで、売る準備を何もできないわけではありません。
次のことは、相続の手続きと並行して進められます。
- 不動産会社に査定を頼み、いくらぐらいで売れそうかを知る
- 家の中の荷物の片付けをどうするか、家族で決めておく
- 隣の土地との境界の目印があるか、測量が必要かを確かめる
- 浄化槽や古い設備など、売るときに伝えるべき家の状態をまとめておく
特に、査定の金額を早めに知っておくと、家を売って分けるか、誰かが受け継ぐかを話し合うときの材料になります。
ただし、売買契約を結ぶのは、相続登記が終わる見通しが立ってからにしてください。
売る時期によっては、税金の特例(相続した空き家を売ったときの3,000万円控除など)を使えるかどうかが変わることもあります。
特例には期限があるので、方向性だけは相続から1年以内を目安に決めておくのがおすすめです。
現場からの一言
不動産の仕事で相続した家の売却に関わっていると、買主が決まってから、協議書の作り直しや相続人の印鑑証明書集めが始まり、引き渡しが延びる場面を見てきました。
協議書と相続登記まで済んでいれば、売り出してから引き渡しまでがとてもスムーズです。
売ることを考え始めたら、まずは手続きがどこまで進んでいるかを確かめるところから始めてください。
八潮市・草加市・越谷市の方へ
八潮市・草加市・越谷市の不動産の相続登記は、さいたま地方法務局越谷支局が窓口です。
登記簿(登記事項証明書)は、どこの法務局でも取ることができます。
八潮で相続した家を売るか、貸すか、持っておくかで迷っている方は「八潮で相続した実家、売る・貸す・持っておく?」もご覧ください。
売る前に確認しておきたい家の状態や、使える税金の特例は、三共コスモスのブログ「相続した実家、売る前にやること」で、不動産会社の目線から解説しています。
八潮市にお住まいの方は「八潮市の相続・不動産のご相談窓口」もご覧ください。
草加市の方は「草加市の相続相談」もご覧ください。
まとめ:売る前に、相続の手続きを順番に済ませる
- 相続した実家は、亡くなった方の名義のままでは売れない
- 遺言書の確認、相続人の確定、財産の調査、遺産分割協議書、相続登記の順に進める
- 売って代金を分けるなら、そのことを協議書に書いておく
- 相続登記は義務。売る予定がなくても早めに済ませる
- 査定や片付けの相談は、手続きと並行して進めてよい
相続した実家を売るときは、不動産の売却の前に、相続の手続きをきちんと済ませておくことが、結果として一番の近道になります。
南出行政書士事務所では、戸籍集めから遺産分割協議書の作成までを「相続手続きサポート」(100,000円・税別)でお手伝いしています。
宅地建物取引士として13年の実務経験があるので、協議書を作る段階から、売ったらいくらになるかの目安を出し、売り方まで一緒に考えることができます。
初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
あわせて読みたい:換価分割とは ― 不動産を「売って分ける」ときに知っておきたいこと
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