相続した空き家を売るときの3,000万円特例 — 使える条件と手続き

親が1人で暮らしていた実家を相続し、誰も住む予定がないため売ることにした、というご相談は少なくありません。
古い家でも、土地の値段によっては、売ったときに大きな利益が出ることがあります。
利益が出ると、所得税と住民税がかかります。
ただ、相続した空き家を売る場合には、一定の条件を満たせば、利益から最大3,000万円を差し引ける特例があります。
この特例は条件が細かく、売り方や、相続したあとの家の使い方によっては使えなくなります。
この記事では、空き家の3,000万円特例が使える条件と、売り方の選び方、申告までの手続きを、行政書士と宅地建物取引士の両方の立場から解説します。
この記事でわかること
- 空き家の3,000万円特例で、税金がどのくらい変わるか
- 特例が使える家と、使えなくなる場合
- 3つの売り方と、確認書から確定申告までの手続き
空き家の3,000万円特例とは
正式には「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といいます。
亡くなった方が住んでいた家を相続し、その家や土地を売ったときに、売って得た利益(譲渡所得)から最大3,000万円を差し引ける制度です。
2024年1月1日以後の売却で、その家を相続した人が3人以上いる場合は、1人あたり2,000万円までになります。
古い実家ほど、利益が大きく出やすい
譲渡所得は、売った金額から、その家や土地を買ったときの金額(取得費)と、売るためにかかった費用を差し引いて計算します。
相続した家の場合、取得費は亡くなった方が買ったときの金額を引き継ぎます。
何十年も前に買った実家では、当時の売買契約書が見つからないことがよくあります。
取得費がわからないときは、売った金額の5%しか差し引けないため、利益が大きく計算されてしまいます。
たとえば、実家を2,000万円で売り、取得費がわからず、仲介手数料などの費用が80万円かかったとします。
この場合、譲渡所得は約1,820万円になり、税金は所得税と住民税を合わせて約370万円が目安です。
特例を使えれば、この利益から3,000万円を差し引けるため、税金はかからなくなります。
実際の税額は、取得費や費用によって変わります。
計算や申告は税理士の業務ですので、当事務所では提携の税理士をご紹介しています。
特例が使える家の条件
特例の対象になるのは、次の条件をすべて満たす家と、その敷地です。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 建てられた時期 | 昭和56年(1981年)5月31日以前に建てられた家 |
| 建物の種類 | 区分所有の登記がされていない家(マンションは対象外) |
| 住んでいた人 | 亡くなる直前に、亡くなった方が1人で住んでいた |
| 相続したあと | 売るまでの間、貸したり、住んだり、事業に使ったりしていない |
| 売った金額 | 1億円以下 |
| 売った相手 | 親子・夫婦などの親族や、生計を一にする親族などではない |
建てられた時期は、登記簿(登記事項証明書)の建物の欄に書かれた新築の日付で確かめられます。
登記簿に日付がない場合は、固定資産税の課税台帳などで確認します。
老人ホームに入っていた場合
亡くなった方が、亡くなる前に老人ホームなどに入所していた場合でも、一定の条件を満たせば対象になります。
入所の前に住んでいた家で、要介護認定などを受けていたこと、入所したあとも家財を置いたままにしていて、ほかの人が住んでいなかったことなどが条件です。
相続したあとに貸すと、使えなくなる
この特例でいちばん気をつけたいのが、相続したあとの使い方です。
売るまでの間に、一度でも人に貸したり、相続人が住んだりすると、特例は使えません。
売るか貸すか迷っているうちに、とりあえず貸してしまうと、あとで売るときにこの特例が使えなくなります。
売った場合と貸した場合で、手元に残るお金がどのくらい違うかは、無料の「売る・貸す・残す 10年比較シミュレーター」で比べられます。
貸すときの注意点は「相続した家を貸すときの注意点」で解説しています。
3つの売り方 — 解体・耐震リフォーム・買主に任せる
この特例は、古い家をそのまま売るだけでは使えません。
耐震基準を満たすようにリフォームするか、家を取り壊すことが必要です。
売り方は、次の3つから選びます。
| 売り方 | 内容 | 向いている場合 |
|---|---|---|
| ① 耐震リフォームして売る | 売る前に耐震改修をして、家と土地を売る | 建物の状態がよく、家として住みたい買主がいるとき |
| ② 取り壊して更地で売る | 売る前に家を取り壊し、土地だけを売る | 建物が古く、土地として売るほうが早いとき |
| ③ 買主が工事する | 家が建ったまま売り、買主が売った年の翌年2月15日までに耐震改修か取り壊しをする | 解体費を先に用意したくないとき |
③は、2024年1月1日以後の売却から使えるようになった方法です。
それまでは、売主が自分で解体や耐震改修をしてから売る必要がありました。
①の場合は、売る日より前の2年以内に検査を受けた「耐震基準適合証明書」などが必要です。
昭和56年5月31日以前の木造住宅は、耐震改修に数百万円かかることも多いため、実際には②か③を選ぶ方がほとんどです。
取り壊したあとの土地も、使い方に注意
②の場合、取り壊したあと売るまでの間に、その土地を駐車場として貸したり、物置を建てたりすると、特例が使えなくなります。
更地にしたら、売るまでそのままにしておく必要があります。
現場からの一言
2024年に③の方法ができてから、古い家を建てたままの状態で、解体を前提に買ってくれる買主に売るケースが増えました。
売主は解体費を先に払わずに済み、買主は自分の計画に合わせて解体できます。
ただし、買主が翌年2月15日までに解体しなかった場合、特例が使えなくなるのは売主のほうです。
売買契約書に、買主が期限までに取り壊すことと、取り壊したことがわかる書類を売主に渡すことを、はっきり書いておくことが大切です。
売る期限 — 相続から3年後の年末まで
この特例を使うには、相続が始まった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。
たとえば、2024年に亡くなった方の実家なら、2027年12月31日までに売れば対象です。
また、制度自体が2027年12月31日までの売却を対象としています。
2025年以降に亡くなった方の実家は、この制度の期限のほうが先に来ます。
亡くなった年ごとの期限の一覧と、相続登記・固定資産税の期限は「相続した空き家の3つの期限」でまとめています。
特例を使うための手続き
特例を使うためには、売った翌年に確定申告をする必要があります。
利益から3,000万円を差し引いた結果、税金がかからない場合でも、申告をしないと特例は使えません。
① 市区町村で「被相続人居住用家屋等確認書」をもらう
まず、家のある市区町村に申請して、「被相続人居住用家屋等確認書」を発行してもらいます。
亡くなった方が1人で住んでいたことや、相続したあと空き家のままだったことを、市区町村が確認する書類です。
申請には、主に次のような書類が必要です。
- 亡くなった方の住民票の除票
- 相続人の住民票
- 家を使っていなかったことがわかる書類(電気・ガスの閉栓や、水道の使用中止の日付がわかるもの)
- 売買契約書の写し
- 取り壊した場合は、建物の閉鎖事項証明書など
必要な書類は市区町村によって違い、発行までに1〜2週間ほどかかることもあります。
相続人が複数いて、それぞれが特例を使う場合は、1人ずつ申請します。
② 売った翌年に確定申告をする
売った翌年の2月16日から3月15日までに、税務署に確定申告をします。
確定申告書には、次のような書類を付けます。
- 譲渡所得の内訳書
- 登記事項証明書など(相続で取得したこと、建てられた時期、区分所有でないことがわかるもの)
- 被相続人居住用家屋等確認書
- 耐震基準適合証明書など(耐震リフォームした場合)
- 売買契約書の写しなど(売った金額が1億円以下であることがわかるもの)
③の買主が工事する方法の場合は、確認書に工事が済んだことの確認が含まれるため、買主が取り壊しや耐震改修を終えてから申請することになります。
相続人が複数いるときの注意点
相続人が複数で家を共有している場合は、それぞれの相続人が、自分の持分について特例を使えます。
ただし、売った金額が1億円以下かどうかは、ほかの相続人が売った分も合わせて判断します。
また、相続税を納めた方は、相続税の一部を取得費に加えられる別の特例があり、空き家の3,000万円特例とはどちらかを選ぶことになります。
どちらが有利かは、税理士に試算してもらいましょう。
相続人どうしで家を共有にする場合の注意点は「共有名義の不動産を相続したら」で解説しています。
八潮市・草加市で空き家を売る場合
八潮市・草加市・三郷市にある不動産の相続登記は、さいたま地方法務局 草加出張所が管轄しています。
特例を使って売るには、まず相続登記で名義を相続人に変えておく必要があります。
確認書は、空き家のある市区町村に申請します。
当事務所のグループの三共コスモスは、八潮市で不動産の売買と買取を行っています。
解体を前提に買主を探す場合も、三共コスモスが直接買い取る場合も、特例の条件に合わせた契約の進め方をご案内できます。
三共コスモスのページ「相続空き家の3,000万円控除を賢く使う方法」では、買取の場合の使い方を紹介しています。
相続登記から売却までをまとめてお手伝いする「相続不動産の売却サポート」もご用意しています。
草加市の方は「草加市の相続相談」、越谷市の方は「越谷市の相続相談」もご覧ください。
まとめ:売り方を決める前に、条件を確かめる
- 相続した空き家を売って利益が出たとき、最大3,000万円(相続人3人以上なら1人2,000万円)を差し引ける
- 対象は、昭和56年5月31日以前に建てられ、亡くなった方が1人で住んでいた家(マンションは対象外)
- 相続したあとに貸したり住んだりすると使えない
- 売り方は、耐震リフォーム・取り壊し・買主による工事(2024年〜)の3つ
- 相続から3年後の年末まで、かつ2027年12月31日までに売る
- 市区町村の確認書をもらい、売った翌年に確定申告をする
この特例は、売ってから気づいても間に合わないことがあります。
相続したあとに貸してしまった、取り壊したあとの土地を駐車場にしてしまった、という理由で使えなくなるケースもあります。
売り方を決める前に、特例が使えるかどうかを確かめておきましょう。
南出行政書士事務所では、相続人調査(戸籍の収集)から遺産分割協議書の作成まで、相続の手続きをまとめてお手伝いする「相続手続きサポート」をご用意しています。
宅地建物取引士として13年の実務経験があり、特例の条件に合う売り方のご相談から売却まで、同じ窓口で対応できます。
初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
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