「何もいらない」と伝えたい — 相続放棄と相続分の放棄の違い

相続放棄と相続分の放棄 何もいらないときの2つの方法

親が亡くなったとき、ほかの兄弟に遺産をまかせて、自分は何も受け取らないと決める方は少なくありません。

実家は長男が継ぐ、介護をしてくれた姉に多く渡したい、といった事情はよくあります。

このとき、「相続を放棄した」と言っても、実際には2つの意味があります。

家庭裁判所で手続きをする「相続放棄」と、遺産分割協議で何も受け取らないことにする「相続分の放棄」です。

この2つは、借金の扱いや期限が大きく違います。

違いを知らないまま選ぶと、あとで思わぬ請求を受けることもあります。

この記事でわかること

  • 相続放棄と相続分の放棄の違い
  • 借金があるときに注意したいこと
  • 何も受け取らないときの遺産分割協議書の書き方

2つの「放棄」は何が違うのか

相続放棄は、家庭裁判所に申し立てて、はじめから相続人ではなかったことにする手続きです。

預貯金や不動産などのプラスの財産も、借金などのマイナスの財産も、一切引き継ぎません。

相続分の放棄は、相続人であることは変わらないまま、遺産分割協議で「自分は何も受け取らない」と決めることです。

法律で定められた手続きではなく、相続人どうしの話し合いの結果として行われます。

相続放棄相続分の放棄
手続き家庭裁判所に申述する遺産分割協議書に署名・押印する
期限相続を知ってから3か月以内期限はない
相続人としての立場はじめから相続人ではなかったことになる相続人のまま
借金引き継がない法定相続分の支払い義務が残る
ほかの相続人への影響次の順位の人が相続人になることがある次の順位には移らない
費用収入印紙800円と郵便切手など特になし(協議書の作成を頼む場合は報酬)

相続分の放棄では、借金はなくならない

いちばん大きな違いは、借金の扱いです。

遺産分割協議で「借金は長男が引き継ぐ」と決めても、それは相続人どうしの約束にすぎません。

お金を貸している銀行などの債権者は、その約束に関係なく、各相続人に法定相続分に応じて支払いを求めることができます。

たとえば、相続人が子2人で、亡くなった親に600万円の借金があったとします。

弟が相続分を放棄して何も受け取らなかったとしても、債権者は弟にも300万円の支払いを求めることができます。

何も受け取っていないのに、借金だけを払うことになりかねません。

借金があるかもしれないときは、相続分の放棄ではなく、家庭裁判所での相続放棄を考えてください。

借金があるかどうかわからないときの考え方は「借金があるかわからないとき — 単純承認・限定承認・相続放棄の違い」で解説しています。

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相続放棄をすると、相続人が変わることがある

相続放棄には、ほかの人を巻き込むことがあるという面もあります。

子が全員相続放棄をすると、亡くなった方の親(親がいなければ兄弟姉妹)が新たに相続人になります。

つまり、叔父や叔母、甥や姪に相続の話が回っていくことがあります。

借金がある場合、その人たちも相続放棄をするかどうか決めなければなりません。

一方、相続分の放棄では、相続人の顔ぶれは変わりません。

「兄に全部まかせたい」という場合は、相続分の放棄のほうが話がまとまりやすいでしょう。

また、相続放棄には、相続を知ってから3か月以内という期限があります。

その間に遺産の一部を使ったり売ったりすると、相続を認めたものとみなされ、相続放棄ができなくなることがあります。

くわしくは「相続放棄とは — 3か月以内の手続きと、やってはいけないこと」をご覧ください。

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なお、相続放棄をしても、そのとき実家に住んでいるなど、遺産を実際に管理している人は、次に引き継ぐ人に渡すまで大切に保管する義務があります。

どちらを選べばいい? ケース別の考え方

借金がない・少ないとわかっている

相続分の放棄で十分なことが多いです。

家庭裁判所の手続きが不要で、期限もありません。

ほかの相続人と話し合い、遺産分割協議書に署名・押印すれば済みます。

借金がある、または借金があるかわからない

相続放棄を選びます。

相続分の放棄では、借金の支払い義務から逃れられません。

3か月の期限があるので、早めに財産と借金を調べることが大切です。

財産の調べ方は「財産目録の作り方」で紹介しています。

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親や兄弟姉妹に迷惑をかけたくない

相続放棄をすると、次の順位の人が相続人になることがあります。

借金がなければ、相続分の放棄で済ませたほうが、親族に新たな手続きを求めずに済みます。

遺産分割の調停が始まっている

家庭裁判所の遺産分割調停の中で、相続分を放棄して手続きから外れることもできます。

この場合は、裁判所の指示に従って、相続分を放棄する書面などを提出します。

ただし、この場合も借金の支払い義務がなくなるわけではありません。

何も受け取らないときの遺産分割協議書の書き方

相続分を放棄するときは、遺産分割協議書に、ほかの相続人が何を受け取るかを書き、自分は何も受け取らないことがわかるようにします。

たとえば、次のような書き方です。

  • 「相続人 八潮花子は、本遺産分割協議において、何らの遺産も取得しない。」
  • 「次の遺産は、相続人 八潮一郎が取得する。」として、不動産・預貯金などを具体的に書く

相続人全員が署名し、実印で押印して、印鑑証明書を添えます。

何も受け取らない人も、署名・押印が必要です。

借金については、「被相続人の債務は、相続人 八潮一郎が負担する。」と書くことができます。

ただし、先に説明したとおり、この取り決めは債権者に対しては効力がありません。

債権者に借金を引き継ぐ人を一本化してもらうには、債権者の承諾が必要です。

協議書の全体の書き方は「遺産分割協議書の書き方」、見本は「遺産分割協議書の見本」をご覧ください。

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なお、不動産の名義変更の際に、「相続分のないことの証明書」に署名を求められることがあります。

生前に十分な贈与を受けたので相続分はない、という内容の書面です。

事実と違う内容に署名すると、あとで争いになることもあるので、内容を確かめてから署名してください。

現場からの一言

「何もいらないから、ハンコだけ押すよ」と言われる方は多く、それ自体はご家族の思いやりです。

ただ、亡くなった方に事業の借入やカードローンがあった場合、あとから請求が届くこともあります。

何も受け取らないと決める前に、借金がないかだけは確かめておくことをおすすめしています。

八潮市・草加市・越谷市での手続きの窓口

相続放棄の申述先は、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

八潮市・草加市・越谷市・三郷市・春日部市などにお住まいだった方の場合は、さいたま家庭裁判所 越谷支部になります。

相続分の放棄(遺産分割協議)には、裁判所の手続きは必要ありません。

ただし、不動産の名義変更(相続登記)には遺産分割協議書を使います。

八潮市・草加市・三郷市の不動産の登記は、さいたま地方法務局 草加出張所が窓口です。

草加市の方は、草加市の窓口と不動産事情をまとめた「草加市の相続相談」のページもご覧ください。

春日部市の方は、春日部市の窓口と不動産事情をまとめた「春日部市の相続相談」のページもご覧ください。

まとめ:借金の有無で選ぶ

  • 相続放棄は、家庭裁判所の手続きで、はじめから相続人でなかったことになる
  • 相続分の放棄は、遺産分割協議で何も受け取らないこと。相続人のまま
  • 相続分の放棄では、借金の支払い義務は残る
  • 借金がある・わからないなら、3か月以内に相続放棄を検討する
  • 借金がないなら、相続分の放棄のほうが親族を巻き込まずに済む

南出行政書士事務所では、財産と借金の調査、相続人全員が納得できる遺産分割協議書の作成をお受けしています。

相続放棄の申述は、提携の司法書士・弁護士と連携してご案内します。

手続きをまとめてお任せいただく場合は「相続手続きサポート」をご覧ください。

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初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

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