相続土地国庫帰属制度とは — いらない土地を国に引き取ってもらう条件と費用

相続土地国庫帰属制度 いらない土地を国に引き取ってもらう

親から相続した土地の中に、使い道がなく、売れそうにもない土地が含まれていることがあります。

遠方の山林や農地、家が建っていない空き地などです。

使わなくても、持っている限り固定資産税や草刈りなどの管理はかかり続けます。

こうした土地を、一定の条件のもとで国に引き取ってもらえるのが「相続土地国庫帰属制度」です。

2023年4月に始まり、制度ができる前に相続した土地も対象になります。

ただし、どんな土地でも引き取ってもらえるわけではなく、費用もかかります。

この記事でわかること

  • 国に引き取ってもらえない土地の条件
  • 審査手数料と負担金の目安
  • 申請の流れと、売却・買取とどちらを先に考えるべきか

相続土地国庫帰属制度とは

相続土地国庫帰属制度とは、相続や遺贈で取得した土地を、法務大臣の承認を受けて国のものにしてもらう制度です。

使う予定のない土地が放っておかれ、所有者がわからなくなる問題を防ぐために作られました。

申請できるのは、相続または遺贈(相続人に対するもの)で土地を取得した人です。

自分で買った土地や、会社が持っている土地は対象になりません。

兄弟などと共有している土地は、共有している全員でそろって申請します。

法務省の統計では、2026年8月末までに約6,000件の申請があり、約3,100件が国に引き取られています。

一方で、審査の途中で取り下げられたものも1,100件あまりあり、そのうち半数ほどは「土地を活用できる見込みが出てきた」という理由でした。

申請を考える過程で、売ったり、隣の人に譲ったりできる道が見つかることも多いということです。

国に引き取ってもらえない土地

この制度では、国が管理しやすい土地しか引き取ってもらえません。

引き取ってもらえない土地は、申請の段階で門前払いになるもの(却下)と、審査のうえで断られるもの(不承認)に分かれます。

申請そのものができない土地

  • 建物が建っている土地
  • 抵当権などの担保や、他人が使う権利が設定されている土地
  • 通路や水路など、他人が使うことが予定されている土地
  • 土壌が汚染されている土地
  • 境界がはっきりしない土地、所有権について争いがある土地

特に注意したいのが、建物がある土地は申請できないという点です。

空き家が建っている実家の土地を国に引き取ってもらうには、先に建物を解体して更地にする必要があります。

審査で断られることがある土地

  • 管理に費用がかかる崖がある土地
  • 車や大きな工作物、管理の妨げになる樹木などが残っている土地
  • 地中にコンクリートの塊やごみなどが埋まっている土地
  • 隣の人と争いがあり、裁判をしないと管理できない土地
  • そのほか、管理や処分に大きな費用や手間がかかる土地

境界がはっきりしない土地は、申請前に隣地の方と境界を確かめておく必要があります。

実際に審査で断られたり、断られることがわかって取り下げたりした例も少なくありません。

かかる費用 — 審査手数料と負担金

費用は、申請するときの審査手数料と、承認されたあとに納める負担金の2つです。

費用金額納めるとき
審査手数料土地1筆につき14,000円申請するとき(収入印紙)
負担金(原則)1筆20万円承認されたあと30日以内
負担金(市街化区域などの宅地)面積に応じて算定(100㎡で約55万円、200㎡で約79万円)承認されたあと30日以内

審査手数料は、申請を取り下げたり、断られたりしても返ってきません。

負担金は、国が管理する10年分の費用にあたるもので、宅地・田畑・雑種地などは原則20万円です。

ただし、市街化区域や用途地域の中にある宅地などは面積に応じて決まり、広いほど高くなります。

森林も面積に応じて算定されます。

隣り合った同じ種類の土地が複数あるときは、まとめて1つの土地として負担金を計算してもらうよう申し出ることもできます。

このほか、建物の解体費、境界を確かめる測量の費用、申請書の作成を専門家に頼む場合の報酬などが別にかかります。

建物の解体費は、木造の一戸建てでも100万円を超えることが珍しくありません。

申請の流れと期間

  1. 法務局に事前相談する(予約制)
  2. 申請書と添付書類(土地の位置や境界がわかる図面・写真など)をそろえる
  3. 法務局に申請し、審査手数料を納める
  4. 法務局の職員が書類を審査し、現地を調べる
  5. 承認されたら、通知から30日以内に負担金を納める
  6. 負担金を納めた時点で、土地は国のものになる

申請から結論が出るまでの標準的な期間は、8か月とされています。

負担金を30日以内に納めないと、承認の効力がなくなるので注意してください。

申請は、土地の所有者本人が行います(代理人による申請はできません)。

申請書や添付書類の作成は、弁護士・司法書士・行政書士に依頼することができます。

売却・買取と、どちらを先に考えるか

国に引き取ってもらうには、解体費や負担金など、まとまったお金がかかります。

一方で、売ることができれば、費用がかからないどころか、お金を受け取れます。

そのため、まずは売れるかどうかを確かめ、どうしても売れない土地について国庫帰属を考える、という順番をおすすめします。

方法お金の流れ向いている土地
仲介で売る売却代金を受け取る(仲介手数料・税金などはかかる)住宅地など、買いたい人がいる土地
不動産会社の買取相場より低めでも代金を受け取れる。建物や荷物が残ったままでもよい古家付き、早く手放したい土地
隣の人に譲る・売る安くても話がまとまれば手放せる隣の土地と合わせると使いやすくなる土地
国庫帰属手数料・負担金・解体費などを払う買い手がつかない山林・農地など

八潮市やその周辺は、市街化区域の住宅地が多く、建物が古くても土地として買いたい人がいるケースがほとんどです。

宅地を国に引き取ってもらうと面積に応じた負担金がかかり、さらに解体費も必要になるため、売却や買取のほうが手元に残るお金で有利になることが多いでしょう。

売る場合と国に返す場合の比べ方は、八潮市の不動産会社・三共コスモスのブログ「いらない土地、国に返す?売る?」で、八潮市の土地を例に解説しています。

現場からの一言

相続した土地の相談では、「国に返せると聞いた」と国庫帰属から話が始まることがあります。

けれども、八潮市内の住宅地であれば、ほとんどの場合は売却や買取で手放せます。

国庫帰属は費用をかけて手放す方法なので、まずは売るといくらになるかを確かめてから考えるのが近道です。

埼玉県での窓口

相続土地国庫帰属制度の相談と申請は、土地がある都道府県の法務局の本局で行います。

埼玉県内の土地なら、さいたま地方法務局(本局)が窓口です。

八潮市・草加市・三郷市の不動産登記を扱う草加出張所では申請を受け付けていないので注意してください。

相談は、さいたま地方法務局の予約サービスか電話で予約してから行います。

なお、国庫帰属の申請をするには、その土地が自分の名義になっている必要があります。

亡くなった方の名義のままの場合は、先に相続登記を済ませます。

相続登記は2024年4月から義務になっており、それより前の相続も2027年3月末までに登記が必要です。

くわしくは「数次相続とは」をご覧ください。

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草加市の方は、草加市の窓口と不動産事情をまとめた「草加市の相続相談」のページもご覧ください。

春日部市の方は、春日部市の窓口と不動産事情をまとめた「春日部市の相続相談」のページもご覧ください。

まとめ:国庫帰属は「売れない土地」の最後の手段

  • 相続土地国庫帰属制度は、相続した土地を国に引き取ってもらう制度
  • 建物がある土地、境界がはっきりしない土地などは申請できない
  • 審査手数料は1筆14,000円、負担金は原則20万円(市街化区域などの宅地は面積に応じて)
  • 申請から結論まで8か月ほど。承認後30日以内に負担金を納める
  • 売れる土地なら、売却や買取のほうが手元にお金が残ることが多い

南出行政書士事務所では、相続土地国庫帰属制度の申請書と添付書類の作成をお受けしています。

申請の前提となる戸籍の収集や遺産分割協議書の作成もあわせてお任せいただけます。

相続登記は提携の司法書士と連携して進めます。

手続きをまとめてお任せいただく場合は「相続手続きサポート」をご覧ください。

宅地建物取引士として13年の実務経験があり、国に引き取ってもらうか、売るかの判断から、そのままご相談いただけます。

初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

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