遺産分割協議書の書き方 ― 自動車を相続するケース

これまで不動産・預貯金のパターンをご紹介してきましたが、相続財産には自動車が含まれることも少なくありません。

なお、相続財産が自動車のみで、それ以外に分けるべき遺産がない場合は、国土交通省のホームページで公開されている遺産分割協議書のひな形を利用するのが簡便です。

また、自動車の価値が100万円以下か、それを超えるかによって、移転登録に必要な書類の作り方(遺産分割協議成立申立書で足りるか、遺産分割協議書が必要か)が変わってきます。

実際には、自動車以外に不動産や預貯金など複数の遺産があるケースがほとんどですので、今回は複数の遺産をまとめて1通の協議書に記載する際の参考として、自動車を相続人の一人が取得するケースをご紹介します。

ケース設定

  • 被相続人:八潮A郎(仮名)
  • 相続人:妻・八潮B美、長男・八潮C男、長女・八潮D子
  • 相続財産:不動産、自動車1台
  • 分割内容:不動産は法定相続分に従い、自動車は長男・八潮C男が取得する

八潮市内にお住まいのご家族を想定した設定です。「日常的に運転していた子が引き継ぐ」「そのまま手放さず使いたい」といったご事情から、相続人の一人が単独で取得するケースは実務上よく見られます。

遺産分割協議書のサンプル


遺産分割協議書

本籍   :埼玉県草加市中央〇丁目〇番〇号
最後の住所:埼玉県八潮市八潮〇丁目〇番地〇
被相続人 :八潮A郎(令和〇年〇月〇日死亡)

 相続人 八潮B美、相続人 八潮C男および相続人 八潮D子は、被相続人の遺産について、本日、遺産分割協議を行い、本書のとおり同意した。

1 八潮B美、八潮C男および八潮D子は、次の遺産を、八潮B美が2分の1、八潮C男および八潮D子が各持分4分の1の割合で取得する。
(土地)所在   八潮市八潮〇丁目
    地番   〇番〇
    地目   宅地
    地積   〇〇平方メートル
(建物)所在   八潮市八潮〇丁目〇番地
    家屋番号 〇番〇
    種類   居宅
    構造   〇〇
    床面積  〇〇平方メートル

2 八潮C男は、次の遺産を取得する。
  普通乗用車 1台
  車名    〇〇〇〇
  登録番号  春日部〇〇そ〇〇ー〇〇
  車台番号  第〇〇〇〇号
  名義人   八潮A郎

3 後日、新たな遺産が発見されたときは、八潮B美が当該遺産を取得するものとする。

 以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、本協議書を3通作成し、署名押印のうえ、各1通ずつ保有する。

令和〇年〇月〇日

 住所:
 氏名:               ㊞

 住所:
 氏名:               ㊞

 住所:
 氏名:               ㊞


記載時のポイント

1. 車検証の記載事項を転記する

自動車を特定するためには、「車名」「登録番号」「車台番号」「名義人」を正確に記載します。

これらの情報は、自動車検査証(車検証)に記載されています。

特に車台番号は同一車種でも1台ごとに異なる重要な識別情報のため、転記ミスがないよう注意が必要です。

2. 相続後は「移転登録」が別途必要

遺産分割協議書を作成しただけでは、自動車の名義は変わりません。

運輸支局での移転登録(名義変更)手続きが別途必要になります。

この協議書は、その移転登録の際に提出する書類のひとつとして使われます。

手続きには、この協議書のほか、車検証・被相続人の除籍謄本・相続人全員の印鑑証明書などが必要になるのが一般的です。

自動車の名義変更手続きについては、以下の記事を参考にしてください。

自動車を相続したときの手続き、忘れずに確認したいポイント

相続した自動車は名義変更が必要になるケースがほとんどです。このコラムでは、普通自動車・軽自動車の名義変更に必要な書類、100万円以下の車の簡易手続き、廃車、ローン…

3. 自動車の価値が100万円以下の場合

移転登録の手続きにおいて、自動車の価値が100万円以下であることを査定書等で証明できる場合には、相続人全員の実印・押印が揃った遺産分割協議書に代えて、遺産分割協議成立申立書(相続人の代表者1名の署名押印のみで足りる書類)を用いることができます。

相続人全員の押印を揃える手間を省けるため、対象の自動車が高額でない場合は、この申立書の利用を検討するとよいでしょう。

4. 後から判明した遺産の扱い

今回も「上記以外に遺産のあることが判明した場合は、相続人 八潮B美 が取得する」という書き方にしています。

再協議とする書き方も一般的ですが、あらかじめ取得者を指定しておくことで、少額の遺産が後日見つかった際の手続きの手間を減らせます。

5. 署名押印について

遺産分割協議書には実印での押印が必要です。

これは、移転登録手続きの際にも印鑑証明書の添付が求められるためです。

また、記載する住所は生活上の住所ではなく、印鑑証明書に記載されている住所と一致させる必要がある点にも注意してください。

転居などにより印鑑証明書上の住所と現在の住所が異なる場合は、印鑑証明書記載の住所と現住所の両方を併記しておくとよいでしょう。

まとめ

相続財産が自動車のみの場合は国土交通省のひな形や遺産分割協議成立申立書で足りることが多い一方、不動産や預貯金など他の遺産と合わせて1通にまとめる場合は、車検証の記載事項を正確に転記し、移転登録が別途必要になる点を押さえておくことが重要です。

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