デジタル遺言(保管証書遺言)とは — いつから使える?今できる準備

遺言を残しておきたいと思っても、全文を手書きするのは大変です。

自筆証書遺言は、本文を自分で書かなければならず、書き間違えたときの直し方にも決まりがあります。

公証役場で作る公正証書遺言は確実ですが、証人を2人用意し、公証役場に出向く必要があります。

こうした負担を軽くするため、2026年6月に民法が改正され、パソコンで作った遺言を法務局に預ける「保管証書遺言」が新しくできました。

ニュースなどでは「デジタル遺言」とも呼ばれています。

ただし、この制度はまだ使えません。

この記事では、いつから使えるのか、どんな仕組みなのか、始まるまでに今できる準備を解説します。

この記事でわかること

  • デジタル遺言(保管証書遺言)がいつから使えるか
  • 今の遺言(自筆証書遺言・公正証書遺言)との違い
  • 制度が始まるまでに、今の制度でできる準備

デジタル遺言(保管証書遺言)はいつから使える?

デジタル遺言を新しくつくる改正民法は、2026年6月17日に成立し、6月24日に公布されました。

使えるようになるのは、公布から3年以内の、政令で定める日です。

つまり、遅くとも2029年6月までには始まりますが、具体的な日はまだ決まっていません。

今回の改正には、デジタル遺言のほかにも遺言のルールの見直しが含まれています。

始まる時期は、内容によって違います。

改正の内容始まる時期
自筆証書遺言などの押印を不要にする(押印は任意)公布から1年以内(2027年6月までの政令で定める日)
保管証書遺言(デジタル遺言)の新設公布から3年以内(2029年6月までの政令で定める日)
今の遺言書保管制度の手続きのデジタル化(オンライン申請など)公布から3年以内(2029年6月までの政令で定める日)

法務局のシステムを作り直す必要があるため、デジタル遺言は時間をかけて準備が進められます。

始まる日が決まったら、このブログでもお知らせします。

デジタル遺言(保管証書遺言)の仕組み

デジタル遺言は、パソコンなどで作った遺言のデータを法務局に預け、法務局が本人の意思を確認したうえで保管する方式です。

主な特徴は次のとおりです。

  • パソコンやスマートフォンで作れる:手書きは不要。署名の代わりに電子署名などを使う予定
  • データでも紙でも預けられる:データのほか、プリントアウトしたものも保管の申請ができる
  • オンラインで申請できる:法務局が認めれば、ウェブ会議で手続きできる
  • 本人が全文を読み上げる:法務局の職員(遺言書保管官)が本人確認をし、遺言者が遺言の全文を口頭で述べる
  • 検認が不要:亡くなったあと、家庭裁判所での検認の手続きがいらない

全文を口頭で述べるのは、なりすましや、本人の考えと違う遺言が作られることを防ぐためです。

財産目録の部分は、職員が遺言者に見せて確認するなどの方法で、読み上げを省けるようになる予定です。

また、遺言者があらかじめ指定した人には、亡くなったあとに「遺言が保管されている」ことが通知されます。

遺言があることに家族が気づかないまま、遺産分割が進んでしまうことを防げます。

今の遺言との違い

今使える主な遺言は、自筆証書遺言と公正証書遺言の2つです。

自筆証書遺言は、法務局に預ける「自筆証書遺言書保管制度」を使うこともできます。

デジタル遺言と比べると、次のようになります。

自筆証書遺言(自宅で保管)自筆証書遺言(法務局で保管)公正証書遺言デジタル遺言(保管証書遺言)
作り方本文を手書き本文を手書き公証人が作るパソコンなどで作る
証人不要不要2人必要不要
手続きの場所なし法務局に本人が出向く公証役場法務局(ウェブ会議も可)
検認必要不要不要不要
紛失・書き換えの心配ありなしなしなし
今使えるか使える使える使えるまだ使えない

財産目録は、今の自筆証書遺言でもパソコンで作ったり、通帳のコピーを付けたりできます。

ただし、その場合は目録の各ページに署名と押印が必要です。

押印は、改正後は任意になります。

制度が始まるまでに、今できる準備

デジタル遺言が始まるのを待っている間に、ご本人が判断できなくなったり、亡くなったりすることもあります。

遺言を残したい理由がはっきりしているなら、今の制度で早めに作っておくことをおすすめします。

今の制度で遺言を作っておく

今のルールで正しく作った遺言は、新しい制度が始まっても有効です。

また、遺言は何度でも書き直せます。

新しい遺言と前の遺言で内容が食い違う部分は、新しい遺言が優先されます。

今のうちに遺言を作っておき、デジタル遺言が始まってから作り直すこともできます。

確実さを重視するなら公正証書遺言、費用をおさえて手軽に残したいなら、法務局で預かってもらう自筆証書遺言が向いています。

法務局での保管は、手数料が1件3,900円で、亡くなったあとの検認も不要です。

財産と相続人を整理しておく

どの方式で遺言を作るとしても、まず何を、誰に残すのかを決める必要があります。

そのためには、財産の一覧と、相続人が誰になるのかを整理しておくことが大切です。

財産目録の作り方は「財産目録の作り方」で、相続人の範囲は「相続人は誰?」で解説しています。

遺言があることを家族に伝えておく

遺言を作っても、家族が見つけられなければ役に立ちません。

保管場所や、公証役場・法務局で作ったことを、信頼できる家族に伝えておきましょう。

遺言が見つかったときの手続きは、こちらの記事で解説しています。

遺言書が見つかったら最初にやること|探し方から名義変更まで解説

遺言書が見つかった場合の正しい手順を解説します。遺言書の探し方、公正証書遺言と自筆証書遺言の違い、検認の要否、名義変更までの流れをわかりやすく紹介します。

八潮市・草加市・越谷市で遺言を作るには

自筆証書遺言を法務局に預ける場合、この地域では、さいたま地方法務局 越谷支局が遺言書の保管を扱っています。

手続きは予約制で、本人が出向く必要があります。

公正証書遺言は、近くでは草加公証役場や越谷公証役場で作れます。

入院中などで出向けないときは、公証人に来てもらうこともできます(別に費用がかかります)。

当事務所でも、公正証書遺言と、法務局に預ける自筆証書遺言の作成をお手伝いしています。

家や土地の価格の目安をふまえた分け方のご提案や、証人2名の手配も含めた料金は「遺言書作成サポート」でご案内しています。

遺言書作成サポート|不動産のある家の遺言を、宅建士の行政書士と

遺言書の作成を、不動産の仕事を13年続けてきた行政書士がお手伝いします。公正証書遺言は10万円(税別・証人2名込み)、自筆証書遺言は5万円(税別)。実家や土地の分け方ま…

現場からの一言

不動産の売却のご相談を受けていると、遺言があれば家族がもめずに済んだのに、と感じる場面がよくあります。

特に、自宅の土地と建物しか大きな財産がないご家庭では、誰が家を引き継ぐかで話し合いが長引きがちです。

新しい制度を待つより、まず今の制度で一通作っておき、気持ちが変わったら書き直すほうが安心です。

草加市の方は、草加市の窓口と不動産事情をまとめた「草加市の相続相談」のページもご覧ください。

春日部市の方は、春日部市の窓口と不動産事情をまとめた「春日部市の相続相談」のページもご覧ください。

まとめ:デジタル遺言は2029年6月までに開始予定

  • デジタル遺言(保管証書遺言)は、2026年6月の民法改正でできた新しい遺言の方式
  • 始まるのは、公布(2026年6月24日)から3年以内の政令で定める日。今はまだ使えない
  • パソコンで作り、法務局で本人確認と全文の読み上げをして保管する。検認は不要
  • 押印の任意化は、それより早く、公布から1年以内に始まる
  • 今のルールで作った遺言は有効。書き直しもできるので、必要なら今の制度で早めに作っておく

遺言の方式は、財産の内容やご家族の状況によって向き不向きがあります。

南出行政書士事務所では、どの方式で遺言を残すか、何を書いておくべきかのご相談も、初回無料でお受けしています。

相続が始まったあとの戸籍の収集から遺産分割協議書の作成までは、「相続手続きサポート」でまとめてお手伝いしています。

宅地建物取引士として13年の実務経験もあり、ご自宅などの不動産をどう引き継ぐかのご相談にもそのまま対応できます。

お気軽にお問い合わせください。

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