遺産分割協議書の書き方 ― 複数の口座を相続人がそれぞれ1口座ずつ取得するケース

これまで、1口座を3人で分けるケースをご紹介してきました。
今回は、複数ある口座を、相続人それぞれが1口座ずつ丸ごと取得するパターンをご紹介します。
割合計算が不要になるため、比較的シンプルに整理できる方法です。
ケース設定
- 被相続人:八潮A郎(仮名)
- 相続人:妻・八潮B美、長男・八潮C男、長女・八潮D子
- 相続財産:預貯金3口座
- 分割内容:1人が1口座ずつ、それぞれ丸ごと取得する
八潮市内にお住いのご家族を想定した設定です。
実際の相続相談でも、複数の金融機関に口座が分かれているケースは多くみられます。
遺産分割協議書のサンプル
遺産分割協議書
本籍 :埼玉県草加市中央〇丁目〇番〇号
最後の住所:埼玉県八潮市八潮〇丁目〇番地〇
被相続人 :八潮A郎(令和〇年〇月〇日死亡)
相続人 八潮B美、相続人 八潮C男および相続人 八潮D子は、被相続人の遺産について、本日、遺産分割協議を行い、本書のとおり同意した。
1 八潮B美は、次の遺産を取得する。
〇〇銀行 〇〇支店 普通預金
口座番号 〇〇〇〇〇〇〇
口座名義 八潮A郎
残高 金 〇〇〇円(令和〇年〇月〇日現在)
2 八潮C男は、次の遺産を取得する。
△△銀行 △△支店 普通預金
口座番号 〇〇〇〇〇〇〇
口座名義 八潮A郎
残高 金 〇〇〇円(令和〇年〇月〇日現在)
3 八潮D子は、次の遺産を取得する。
□□銀行 □□支店 普通預金
口座番号 〇〇〇〇〇〇〇
口座名義 八潮A郎
残高 金 〇〇〇円(令和〇年〇月〇日現在)
4 後日、新たな遺産が発見されたときは、八潮B美が当該遺産を取得するものとする。
以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、本協議書を3通作成し、署名押印のうえ、各1通ずつ保有する。
令和〇年〇月〇日
住所:
氏名: ㊞
住所:
氏名: ㊞
住所:
氏名: ㊞
記載時のポイント
1. 口座ごとに条項を分けて記載する
割合で分けるケースと異なり、口座ごとに「誰が取得するか」を条項として独立させます。
取得者・口座を対応させて番号を振ることで、後から見返した際にも誤解が生じにくくなります。
2. 残高に差がある場合の考え方
このパターンの注意点は、口座ごとの残高に差があると、相続人間で取得額に不公平感が生まれやすいことです。
今回のサンプルのように残高を明記した上で、もし差が大きい場合は、差額分を代償金でやり取りする(代償分割)という方法を組み合わせることもあります。
単純に「1人1口座」と割り切る前に、各口座の残高を確認し、相続人全員が納得できる組み合わせになっているかを事前にすり合わせておくことが重要です。
3. 口座名義・口座番号は正確に記載する
今回のように口座数が複数になると、記載ミスや取り違えが起きやすくなります。
金融機関名・支店名・預金種別・口座番号は、通帳や残高証明書を確認しながら、一つひとつ正確に転記します。
4. 後から判明した遺産の扱い
今回も「上記以外に遺産のあることが判明した場合は、相続人 八潮B美 が取得する」という書き方にしています。
再協議とする書き方も一般的ですが、あらかじめ取得者を指定しておくことで、少額の遺産が後日見つかった際の手続きの手間を減らせます。
5. 署名押印について
遺産分割協議書には実印での押印が必要です。
これは、金融機関での払戻し手続きの際に印鑑証明書の添付が求められるためです。
また、記載する住所は生活上の住所ではなく、印鑑証明書に記載されている住所と一致させる必要がある点にも注意してください。
転居などにより印鑑証明書上の住所と現在の住所が異なる場合は、印鑑証明書記載の住所と現住所の両方を併記しておくとよいでしょう。
まとめ
複数口座を1人ずつ取得する方法は、割合計算が不要でシンプルに整理できる一方、口座ごとの残高差による不公平感には注意が必要です。
次回は、これを踏まえて、代表者が預貯金を全額取得し、他の相続人へ代償金を支払う「代償分割」のパターンをご紹介します。
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