自筆証書遺言の書き方 — 見本つき・無効にならない5つのポイント

遺言書を作ろうと思ったとき、いちばん手軽なのが、自分で手書きする自筆証書遺言です。
紙とペンと印鑑があれば、費用をかけずに、思い立ったその日に書くことができます。
その一方で、自筆証書遺言は、法律で決まった書き方を一つでも外すと無効になってしまいます。
せっかく書いた遺言書が使えず、結局は家族全員で話し合うことになった、ということも実際に起きています。
この記事では、自筆証書遺言の見本と、無効にならないための5つのポイントを、順番に解説します。
この記事でわかること
- 自筆証書遺言で必ず守らなければならない決まり
- そのまま参考にできる遺言書の見本(文例)
- 無効になりやすい書き方と、書いたあとの保管のしかた
自筆証書遺言とは — 自分で手書きする遺言書
自筆証書遺言は、遺言する方(遺言者)が、自分で手書きして作る遺言書です。
民法で、次の4つが決められています。
- 本文の全部を自分で書く
- 日付を書く
- 氏名を書く
- 印を押す
証人も、公証役場での手続きもいりません。
ただし、誰も内容を確認しないまま作れるので、書き方の間違いに気づきにくいのが弱点です。
公正証書遺言との違いは、次のとおりです。
| 比べるところ | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 |
|---|---|---|
| 作る人 | 本人が手書き | 公証人 |
| 費用 | かからない(法務局に預けると3,900円) | 財産の額で決まる(数万円〜) |
| 証人 | いらない | 2人必要 |
| 内容の確認 | なし(法務局に預けても形式だけ) | 公証人が確認 |
| 亡くなったあとの検認 | 必要(法務局に預けた場合は不要) | 不要 |
公正証書遺言の作り方は「公正証書遺言の作り方」で解説しています。
書き始める前に準備すること
自筆証書遺言は、いきなり清書をするのではなく、下書きをしてから書くのがおすすめです。
書き間違えたときの直し方にも決まりがあるので、下書きで内容を固めておくと、清書がずっと楽になります。
財産を書き出す
まず、自分の財産を一覧にします。
家や土地は、登記事項証明書(登記簿)を法務局で取っておくと、遺言書に正しく書き写せます。
預貯金は、金融機関名と支店名がわかるように、通帳を手元に用意しておきます。
財産の整理のしかたは「財産目録の作り方」も参考になります。
誰に何を残すかを決める
次に、どの財産を誰に残すかを決めます。
相続人が誰になるかがあいまいな場合は、先に確認しておきましょう。
相続人の範囲は「相続人は誰?」で解説しています。
用意するもの
- 紙(便箋やコピー用紙など。法務局に預けるならA4)
- ボールペンや万年筆など、消えない筆記具
- 印鑑(実印がおすすめ)
- 登記事項証明書や通帳など、財産の資料
鉛筆や、こすると消えるペンは、書き換えられるおそれがあるので使わないでください。
自筆証書遺言の見本
家と預貯金を持っている方が、家を妻に、預貯金を長男に残す場合の見本です。
名前や地番は架空のものなので、ご自分の内容に置き換えてください。
遺言書
遺言者 山田太郎は、次のとおり遺言する。
第1条 遺言者は、遺言者の所有する次の不動産を、妻 山田花子(昭和○年○月○日生)に相続させる。
(1)土地 所在 八潮市○○ 地番 ○番○ 地目 宅地 地積 ○○.○○平方メートル
(2)建物 所在 八潮市○○ ○番地○ 家屋番号 ○番○ 種類 居宅 構造 木造瓦葺2階建 床面積 1階 ○○.○○平方メートル 2階 ○○.○○平方メートル
第2条 遺言者は、遺言者名義の預貯金のすべてを、長男 山田一郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。
第3条 遺言者は、前各条に記載のない財産のすべてを、妻 山田花子に相続させる。
第4条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として、長男 山田一郎を指定する。
令和8年10月18日
埼玉県八潮市○○ ○丁目○番○号
遺言者 山田太郎 印
見本のなかで、特に大事なところは次の3つです。
- 家や土地は、住所ではなく登記事項証明書のとおりに書く
- 財産をもらう人は、続柄と生年月日も書いて、誰のことかをはっきりさせる
- 書き漏れた財産があっても困らないように、「記載のない財産」の行き先も書いておく
相続人に残すときは「相続させる」と書くのが一般的です。
相続人ではない孫や子の配偶者などに残すときは「遺贈する」と書きます。
無効にならない5つのポイント
自筆証書遺言が無効になるのは、たいていの場合、次のどれかが原因です。
1. 本文は全部、自分の手で書く
本文をパソコンで作って印刷したもの、家族に代わりに書いてもらったものは、無効です。
録音や動画で残したものも、遺言書としては認められません。
例外は財産目録(財産の一覧)で、目録だけはパソコンで作ったり、通帳のコピーや登記事項証明書を付けたりできます。
その場合は、目録のすべてのページに署名と押印が必要です。
両面に印刷したときは、両方の面に署名と押印をします。
2. 日付は、年月日まで書く
日付は「令和8年10月18日」のように、年・月・日まで書きます。
「令和8年10月吉日」のように、日が特定できない書き方は無効です。
日付のスタンプも、自分で書いたことにならないので使えません。
3. 氏名を書いて、印を押す
氏名は、戸籍のとおりにフルネームで書きます。
印鑑は認印でも有効ですが、本人が押したことがはっきりする実印がおすすめです。
2026年6月の民法改正で、自筆証書遺言の押印は、なくてもよいことになりました。
ただ、この部分が始まるのは2027年6月までの政令で定める日で、まだ始まっていません。
今書く遺言書には、必ず印を押してください。
改正が始まったあとも、印を押しておいて困ることはありません。
4. 財産と、もらう人をはっきり書く
「家は長男に」「自宅を妻に」のような書き方だと、どの不動産のことかがはっきりせず、名義変更の手続きで使えないことがあります。
家や土地は登記事項証明書のとおりに、預貯金は金融機関名と支店名を書いておくと安心です。
私道の持ち分や、隣の小さな土地は、書き漏れが起きやすいところです。
固定資産税の納税通知書とあわせて確認しましょう。
5. 書き間違えたら、新しく書き直す
自筆証書遺言の書き間違いを直すときは、直した場所を示し、直したことを書き添えて署名し、直した場所に印を押す、という決まった方法があります。
この方法を守らないと、直した部分が無効になります。
修正テープや二重線だけで直すのはやめて、書き間違えたら最初から書き直すのが確実です。
ほかにも気をつけたいこと
- 夫婦で1枚の遺言書に連名で書くことはできません。1人1通ずつ作ります
- 遺言書が何枚かになるときは、ページ番号を書き、ホチキスでとめて契印をしておくと安心です(法務局に預けるときは、とじずにばらばらのまま出します)
- 子どもなど一定の相続人には、遺言でも取り上げられない取り分(遺留分)があります。1人にすべてを残すときは、ほかの家族の気持ちも考えておきましょう
書いたあとの保管のしかた
書き上げた遺言書は、封筒に入れて封をし、封じ目に印を押しておくのが一般的です。
封をするかどうかは自由ですが、封印のある遺言書は、亡くなったあとに家庭裁判所で開けることになります。
家族が勝手に開けないよう、封筒に「開けずに家庭裁判所で検認を受けること」と書き添えておくと親切です。
自宅で保管する場合は、なくしたり、見つけてもらえなかったりする心配があります。
亡くなったあとは、家族が家庭裁判所で検認の手続きをしなければなりません。
検認の流れは「遺言書の検認とは」で解説しています。
こうした心配をなくすには、法務局に1通3,900円で預ける「自筆証書遺言書保管制度」が使えます。
預ければ、紛失や書き換えの心配がなく、検認もいりません。
預けるときは、A4の用紙や余白など、追加の決まりがあります。
くわしくは「自筆証書遺言書保管制度の使い方」をご覧ください。
2026年6月の民法改正では、パソコンで作った遺言を法務局に預ける新しい方式も決まりました。
こちらは2029年6月までに始まる予定です。
くわしくは「デジタル遺言(保管証書遺言)とは」をご覧ください。
現場からの一言
不動産の仕事で相続した家の売却に関わると、自筆の遺言書が出てきたのに、家の書き方があいまいで名義変更に使えなかった、という場面に出会うことがあります。
書いた本人は家族に伝わると思っていても、手続きでは登記簿のとおりに特定できるかどうかが問われます。
家や土地が財産の中心になるご家庭ほど、書き上げたら一度、専門家に見てもらうと安心です。
八潮市・草加市・越谷市の方へ
家や土地の登記事項証明書は、どこの法務局でも取れます。
八潮市・草加市・三郷市の不動産を扱っているのは、さいたま地方法務局の草加出張所です。
書き上げた遺言書を法務局に預ける場合、八潮市・草加市・越谷市・三郷市・春日部市の方の窓口は、さいたま地方法務局の越谷支局です。
草加出張所では、遺言書の保管は扱っていないので注意してください。
八潮市にお住まいの方は「八潮市の相続・不動産のご相談窓口」もご覧ください。
草加市の方は「草加市の相続相談」もご覧ください。
まとめ:自筆証書遺言は、決まりを守れば手軽で確実
- 自筆証書遺言は、全文・日付・氏名を自分で書き、印を押して作る
- 財産目録だけはパソコンやコピーでもよいが、全ページに署名と押印が必要
- 日付の「吉日」、夫婦の連名、あいまいな財産の書き方は無効や手続きの支障のもと
- 押印をなくす改正は、まだ始まっていない。今は必ず押す
- 書いたあとは、法務局に預ければ紛失の心配も検認もなくなる
自筆証書遺言は、決まりを守って書けば、費用をかけずに家族の負担を大きく減らせる遺言書です。
書き方に不安がある方、家や土地の書き方を確認したい方は、専門家に見てもらってから清書すると安心です。
南出行政書士事務所では、法務局に預ける自筆証書遺言の作成を、5万円(税別)でお手伝いしています。
分け方のご相談、文案づくり、書き上がった遺言書の確認、法務局への申請の準備まで一緒に進めます。
くわしくは「遺言書作成サポート」をご覧ください。
宅地建物取引士として13年の実務経験もあり、家や土地の書き方まで確認できます。
初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
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